掌の遠国(えんごく)16 「早春の頃」

「早春の頃」

 

昨日やっているギター教室で生徒さんに釘煮をいただいた。
なんでも亡くなったお義母さんが毎年作られたそうで
今も引き継いで作ってご近所に配られてるそうです。

それで僕もご相伴にあずかれたのですが

 

帰宅後、晩酌の友に食べたらその美味しいこと。
生姜が良く効いて最高でした。
今晩はお茶漬けにせな!と思います。

 

イカナゴの釘煮は主に兵庫地方の早春の名物ですが
大阪の春の思い出はシラスのポン酢和え。
母はほうれん草と和えてかつお節もかけたりしてたな。

 

「もおシラスでてるでえ〜」と楽しそうな母と
小学生の僕は、春が来てメタン香る真っ黒な平野川沿いを
センダイ市場までのんびり歩いたものでした。

 

近所の公設市場でも買ったはずなのですが
公設市場の休みの日は少し遠いセンダイ市場へ行きました。
シラスと云えば何故か春の平野川沿いの思い出ばかり蘇る。

 

そのシラスも暖かくなるに連れ段々大きく成って来るのです。
それが終わると苺が出回り、やがて夏には西瓜・・と
昭和40年代の日々は季節の旬のものを楽しみ流れて行きました。

 

人生には苦しい事も多いけど、楽しみも多い。
人はいつも行っていることに、自然と喜びを感じるんでしょうね。

 

生涯に、たくさんあれを作った、食べた、人に分け与えた・・
それは他の人間にも追憶になり、絡み合い
それぞれの人の一生の厚みを積み上げていくんやなと
生姜のよく効いた釘煮を食べて飲みながら
酔って行く頭でぼんやり思ったりしたのでした。